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『またヒステリーが犬飼くんを苛めてるよ』
Bチームの島から私にも聞こえるように声がした。この声は事務の小島さんだ。
(注意をしてるだけよ)
こういう陰口を――ちっとも隠れてないけれど――同じチームのメンバーに言われるのは仕方が無い。私のことを邪魔だと思っているであろう管理職連中に言われるのも解る。だけど小島さんに言われる筋合いは無い。
(やっかんでるんじゃないわよ)
きっと小島さんは犬飼くんのことが好きなんだろう、ことあるごとに私に突っかかってくる。だいたい「ヒステリックお局」というあだ名を社内に蔓延させたのは彼女じゃないだろうか。
(誰だって歳は取るのよ)
前髪を掻き揚げる。額にぽつんとニキビができていた。
(まだ治らない。チョコレート食べ過ぎかしら)
イライラが募るとついお菓子に手を出してしまう。一口サイズのチョコを一つ、また一つ。そして最終的には額にニキビができるのだ。
(気をつけなきゃ)
資料を引き出しに仕舞い、マウスに手を乗せ左右に動かした。ブラックアウトしていたディスプレイが息を吹き返す。
(ストレスが無ければこんなのできないのに)
ぱさりと落ちた前髪が、もう一度額を隠した。
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