230人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
レディーファーストだと言われて、課長に背中を押され店に入る。予約席に案内されて、課長と向かい合って座った。
課長、「ディナーデート」って言ったよね? これってデートなの? でも、課長には彼女がいるんだよね? それなのに、どうして私とデートするの?
頭の中が疑問符だらけで、課長の顔をまともに見られない。
食前酒、オードブル、スープと次々口にしても、美味しいのかさえわからないほど、私の頭は混乱していた。
「ずいぶん無口だな。俺となんかじゃつまらないか。いつも岸田と楽しそうに飲みの相談をしているのを聞いて、羨ましいと思ってたんだ。俺もあんな風に軽く誘えたらなって」
「え⁉ そうだったんですか⁉ だったら、今度から課長もお誘いします」
別に仲間外れにしたつもりはなかったんだけれど、なんとなく煙たくて課長を誘ったことは一度もなかった。
悪いことをしたなと少し反省していると、「いや、そうじゃなく」と苛立ったような声がした。
「みんなの前でおまえ一人を誘うわけにもいかないから、おまえと仲のいい美波さんを誘えばダブルデートに持ち込めるかなと考えたんだ。我ながらいい作戦だと思ったのに、上手くいかないどころか変に誤解されてしまったが、今、こうして二人でいられるんだから成功かな」
照れ臭そうに笑う課長を、呆気に取られて見ていた。
え、待って待って。ダブルデートの課長の相手は私だったってこと? 私とデートしたくて、美波を誘ったの?
最初のコメントを投稿しよう!