上司がフラれる現場を見てしまいました

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上司がフラれる現場を見てしまいました

 『早起きは三文の徳』というけれど、そうじゃない時もある。今朝がまさにそれ。  いつもよりも早く出勤した会社のロビーで、私は信じられない場面に遭遇してしまったのだ。 「最近、キレイになった?」  そんな似合わないセリフで同期の美波を口説いていたのは、私の直属の上司である経理の田中課長だった。  三十四歳の彼がいまだに独身・彼女なしなのは、カネ勘定にしか興味がないからだろうと思い込んでいた私は、思わず柱の陰に隠れてしまうほど驚いた。  確かに美波は大人ニキビができてから変わった。それまで自分の見た目にあまりにも無頓着だった彼女が、突然自分磨きを始めたのだった。  その結果、肌もメイクもファッションも見違えるほどキレイになった。  でも、今の彼女が輝いて見えるのは、見た目の美しさのせいだけじゃない。自分に自信が持てるようになったからだ。  美波は入社以来ずっと田中課長に憧れていたから、てっきり課長の誘いに頷くと思ったのに、意外や意外、あっさり振った。 「ざまあみろ」  小さく呟いた私は、こっそり課長に向かって舌を出した。  美波の良さなんて何も知らないくせに、ちょっとキレイになったからって気安く誘うんじゃないわよ。  私だって美波に触発されて頑張ってキレイになったのに、気がつきもしないバカヤローが!
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