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人魚くん ラスト
海の近くで遂に追手に捕まってしまった人魚くんと海獣医師ちゃん。
人魚くんは「僕は戻るから、どうか彼女のことはもう放っておいてあげてほしい」懇願し、金持ちの家へと戻っていきました。
しかし1人残された海獣医師の少女は諦めません。
人魚の青年と海へ向う3日間、彼がどんなに喜んでいたかを知っているから。
街に戻ると彼女は「彼」を探し始めました。
薬をくれた黒スーツの男を。
暫くすると街の片隅小さなアンティークショップに彼らしき男がいると噂を聞き、彼女は向かいます。
扉を開くと埃っぽい店の奥で、男が山羊の足を生やした女の子と話をしています。
「ねぇ、もっとマシな脚はないの?」
「この間まで気に入ってたじゃないのさ。動物要素は萌えですよ?」
「それって耳とかでしょ?あたし、脚なんですけど?バランス悪いし」
確かに非常に可愛らしい少女ですが、脚だけ山羊とは不格好です。
ふと、背後に立つ海獣医師に気付いた男は少し驚いたあと、ニッコリと笑いました。
「こんにちは。お薬はいかがでしたか?副作用がなかったか気になっていたのです」
「そんなことより……私の願いを叶えて欲しいの」
海獣医師の言葉に男は少し困ったような顔をしました。
「構いませんけど……今度はお代をいただきますよ?」
「いくらでも!一生かかっても返すわ」
「……いやぁ、僕の言っているお代はお金じゃないんですよ。そう……例えば……」
男は小さな瞳をキラリと光らせました。
「お嬢さんの脚は……とても綺麗ですね?」
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