5章 Side:愛梨

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 恐らく雪哉も昼食を食べにこの階に来たのだと思われる。けれど怒りをにじませた雪哉は、友理香を連れて再びエレベーターに乗り込んでしまう。雪哉と友理香の様子から嫌な予感を感じて『ちょっと待って』と声を掛けたが、エレベーターの扉はそのまま閉じてまってしまった。  これは……。愛梨は英語が話せないので助かったけれど、友理香はまずい状況かもしれない。 「ごめんね、哲治がキッチンペーパーの場所がわからないって……ん、どうしたの?」  ようやく戻って来た玲子の声が耳に届く。玲子は今まで一緒にいたはずだった友理香がいない事に気付いて、首を傾げた。玲子のその様子をみて、愛梨もすっと冷静さを取り戻した。 「玲子、ごめん。先に戻ってて」  早口で告げると、玲子が不思議そうな顔をしながらも『わかった』と呟く。愛梨はそんな玲子をその場に置いて、エレベーターと反対にある階段への扉を押し開けた。  通訳室はここから2階上。エレベーターの到着には間に合わないが、2人が室内に入ってしまうまでには、まだ間に合う。1度だけ息を吐くと、そのまま一気に階段を駆け上がる。 (ユキ、それ誤解じゃないけど誤解だよ)  自分でも何を言っているのかよくわからない。父の言う通り本当に日本語すら怪しいんだな、と思ったが、それでもこのまま2人を放置することは出来ない。  3日前は慌てて逃げ出してしまった。けれど友理香の恋心を多少なりとも理解しているつもりの愛梨は、ちょっとした気持ちで愛梨に『悪戯』をしてしまった友理香を放置することはできない。  友理香がこんなことをしてしまった原因は、愛梨にもあるから。
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