5章 Side:愛梨

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「たまたまフォローできたからいいものの、俺や友理香だけじゃなく両方の会社の信用問題に関わる。それが分からない?」 「……ごめん、なさい…」  友理香がようやく謝罪の言葉を呟いた。  雪哉の言葉から、先程の男性がSUI-LENの取引先相手だと知る。だから彼は通訳であった友理香の顔を知っていて話しかけてきたし、雪哉もすぐにトラブルの状況を察する事が出来た。  雪哉の言い分は間違っていない。愛梨は新規事業のプロジェクトメンバーではないが、通訳者たちが『株式会社SUI-LENのコミュニケーション面をサポートする』という契約である以上、社員である愛梨をあの場で放置するのは契約違反となりうる。 「とにかく、これは俺達だけでどうこう出来る問題じゃない。クライアントはともかく、本社には報告させてもらう」 「待って!」  雪哉は間違っていない、けれど。  友理香が急に愛梨を突き放した理由には、思い当たる節がある。3日前、愛梨はあの場から安易に逃げ出してしまって、雪哉との関係をちゃんと否定しなかった。友理香が雪哉に想いを寄せていることを知っていたにも関わらず。  仕事に私情を挟むことは、決して褒められたことではない。勘の良い雪哉は、友理香が困らせるつもりで意図的に愛梨を放置したと語った。友理香もそれを否定しなかった。  だがそうなった原因の一端には、愛梨が友理香に義理を欠いた所為もある。友理香が雪哉に想いを寄せる恋心を知っていたのに、誤解をさせるような行動を取った。だから誤解した友理香だけを一方的に責める気分にはなれない。 「友理香ちゃんも悪気があったわけじゃないんだから」 「悪気の有無は問題じゃない。仕事に私情を挟んで意図的にクライアントを放置するなんて、とても看過できない。それを安易に許す事は、友理香のためにもならない」
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