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プレゼンの発表が終わり、グループ替えのくじ引きが行われた。箱から番号が書いてある紙を引き、該当する席へ向かう。その隣には初めて組む男子が座っていた。スマートフォンを弄っており、私には気づいていない。
改めて彼に目を向けると、肌は色白で傷一つない。爪も丁寧に整えられ、表面に光沢感がある。黒髪には艶があり天使の輪が出来ていた。彼からは清潔感のある良い匂いがして、思わずうっとりとしまう。あ、早く声かけないと。
「あの、初めまして。私、大内真子っていうの」
しかし、返事はない。よく見るとイヤフォンをしている。肩を揺さぶろうと、手を伸ばしたそのとき、彼がこちらを見た。
「あ、初めま」
「なんだ、その面は? いかにも疲れます感満載じゃねぇか。化粧品も合ったもん使ってねえだろ。そもそもちゃんとした生活送ってるか?」
指を差されながら次々と指摘され、口が開いてしまう。周囲の視線も自分に突き刺さった。間違ってはいないけど、そこまではっきり言われると・・・・・・。
「すみません。ごめんなさい。も、申し訳ありません」
何度も謝りながら、私は席につく。彼の言葉が脳裏に繰り返された。その間に教授の説明が終わったのか、学生たちは講義室から出て行く。ぼんやりしている私に香奈と志保が近づいてきた。
「大丈夫? あんなの忘れちゃっていいと思うよ」
先ほどの様子を見ていたのか香奈がフォローしてくれる。
「大丈夫、大丈夫だから。それよりもあの人何?」
「確か加々美くんでしょ。かっこいいけど、はっきり言うタイプだから。でも、彼自身が美に気を使ってるから言い返しにくいというか。まあ、好き嫌い分かれるよね」
私が問いかけると、志保が説明してくれた。2人は気にするなと言わんばかりに肩を叩く。しかし、指摘された部分が事実なだけに余計に落ち込んだ。
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