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今日の授業が終わり、家の近くにある薬局へ向かった。食品売場を彷徨きながら、夕飯の献立を考える。昨日はレポートやらプレゼンの資料を作っていたから、今日も作りたくないな。
私はカップ麺に手を伸ばした。今日は面倒くさいし、これでいいや。明日がんばろう。カップ麺をカゴの中に入れ、レジへ行こうとする。ふと、化粧品売場で立ち止まってしまった。色とりどり入れ物が並び、至る所に宣伝文句が書かれたポップが貼ってある。また、加々美くんの言葉が浮かんだ。
細かい指摘を思い出すと、胃がむかついてくる。確かに彼は失礼だけど、それ以上に上手くできない自分にいらついた。絶対に見返してやりたい。私はカゴを置き、洗顔料や化粧水を眺めた。でも、どれを使えばいいのかな。悩んでいると、突然声をかけられる。
「ちゃんと肌に合わせて選ばないとよくならないぞ」
隣にいたのは加々美くんだった。まさか家近所にあるの。ついてきたわけじゃないよね。焦りで息が上がってしまうが、落ち着いて深呼吸をする。
「そうやって言うなら、どんなのが良いの?」
私は試すように問いかけた。さて、どんな回答が返ってくるか。
「大内の肌的に、今は油分があるのは向いてないな。肌に負荷をかけずに簡単に落とせるやつ。あと、調子悪いときはベースメイクよりもポイントメイクをきちんとしてカバーしろよな」
言い方はきついものの、洗顔料や化粧水を選ぶ目は真剣だ。様子をうかがっていると、加々美くんは次にカゴの中を見た。
「なんか作業してたのかもしれないけど、生活習慣自体が乱れてたら治るもんも治らねえぞ。夜は10時、どんなに遅くても12時は寝ろよ。それで早起きしろ」
彼の指摘が胸にしみる。よく聞く話だけど、つい起きちゃうんだよね。
「あと食事も。面倒くさいとは思うが」
「分かってるよ。野菜ちゃんととれってことでしょ」
「野菜だけじゃねぇ、肉も食えよ。タンパク質を作らなきゃ行けないんだから」
対抗したつもりが、すぐに言い返され言葉を詰まらせる。加々美くんは洗顔料や化粧水を選ぶとレジに向かった。
「なら、スーパーに寄ろう。野菜もそこで買った方がいい。そうと決まったらさっさとレジで会計すませる」
迷いなく進んでいく彼を、私は追いかけていった。
私たちスーパーに行き買い物を済ませた。帰り際、加々美くんにあとで連絡すると言われた。私はその勢いを飲まれ呆気なく連絡先を交換してしまった。
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