父の歩んだ栄光

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「おいおい。大丈夫か……?」  父さんを越えるために、父さんと同じ世界に入って言われた言葉であった。自分では分からなかったが、僕なんかよりも詳しい人たちからすれば、僕の体つきは良くなかったらしい。確かに、周りを見れば自分よりも体格がいい人たちはいたけど、これからなんとでもなると僕は確信していた。いや、確信せざるを得なかったのだ。  なぜなら、僕が越えるのはこの周りの連中ではなく、僕の父なのだから。  その日から僕の人生は、本当の意味で始まった。  毎日のように走り込み、体を鍛え上げた。そして徐々に周りからの評価も上がっていった。それを自分自身気持ちよく感じていた。  でも、まだ足りない。これでは父を超えることはできない。その想いだけは消えることがなかった。 「初めての大会だな。頑張れよ!」  僕のことを支えてくれていた人にそう言われ、初めての大会に僕は出場した。それは、僕と同世代の人たちが参加する新人戦であった。小さな大会であったが、負けられないことは変わらないのである。こんなところでつまずいている場合ではない。
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