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「あれが、あいつの息子か。やっぱ風格が違うな」
「そうだな。さすがあいつの息子ってところだな!」
初めての大会であった新人戦を勝ち。その後、順調に勝ち星を積み重ねていた時のことであった。僕の周りだけでなく、いろんな人から僕の名前を知っている人たちが増えた。そして、僕の名前を見て、父さんの名前を口にする人たちがやはり絶えることはなかった。
「お前が、あの人の息子なのか?」
大会の試合前の準備中に同じ大会に出る選手に話しかけられる。
「そうだけど……」
「いくらこの世界が、血筋が大事って言ったてな。努力によってそんなのは覆せるんだ。だから、今日、俺はお前に勝って、俺の強さを証明してやる」
僕にそう豪語する者の眼差しはまっすぐと僕のことを睨みつけて、勝負の前だというのに火花を散らしていた。
「あぁ。僕も“僕”の強さを証明するだけだ」
それだけ言い残して僕はその場を後にした。
そして、すぐに戦いの火蓋は落とされた。
「強い! 圧勝だぁぁぁ!!」
会場ではそんな声が響き渡り、先ほど、僕に勝つと豪語していたやつを尻目にその場をさろうとした時、舌打ち混じりにそいつは言い放った。
「結局、血筋なのかよ……」
僕は、すぐにでもそいつの胸ぐらを掴んで、ぶん殴ってやりたかった。しかし、そんなことをしても何も得ることはないし、虚しいだけだってことを僕自身が一番理解していた。
「血筋を否定する奴が、そんなことを言わないでくれよ……」
悔しさで顔を歪めているそいつに聞こえないくらいの声で僕は涙で顔を歪ませながら、そう呟いた。
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