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それから、幾つもの大会を勝利していき、ついに父を超えるチャンスが訪れたのであった。
「わかっているな。この大会がどれだけ大事かってことは……?」
「もちろんです」
父を超えるチャンスというのは今年、節目を迎える僕たちだけが出場することのできる大会への出場が叶ったことであった。
「お前はここまで全勝という映えある成績を収めているが、まだ大きな大会では勝っていない。つまり、まだ“お前”のことを認めている人はいない。しかし、お前の強さを信じている人はいる。何が言いたいかはわかるな?」
「はい。痛いほど」
ここまで全勝しているが、それはどれも小さな大会。僕にとって初めての最大級の大会。そして、この大会には父さんも出場した。そして、優勝した。だからこそ、僕の力を理解している人はいないが、僕の才能を信じている人は山ほどいるということだった。
「ここで、父さんよりも強さを証明するんだ。これから立て続けに行われる、お前たちだけが出場できる最大級の大会で負けることなく、優勝し続ける。それが、お前が父さんを超える最低条件。その上でお前は父さんよりも圧巻の勝利をしないといけない。そうでなければ、お前が父さんを超えたと認める人は誰もいない」
「はい」
「お前の父さんが最強と言われる理由。それは──」
「わかっています。だから、言わないでください」
「そう、だな。すまん……」
僕の父さんが称えられる理由。それはこれから僕が出場する最大級の大会をそれぞれ優勝し、さらにそれぞれの大会を優勝するまでに一度も負けたことがなかったからだった。それは、その勝負の世界で初めての出来事であった。
それは数十年と続いてきた世界で初めての出来事。その大会で勝つことさえ至難と言われる中で、その大きな大会を全て制し、一度として負けることがなかった。最強と謳われるのも納得できる功績であった。
まだ若輩者でありながら、この勝負の世界に身を置いてきた一人としてその所業が簡単ではないことは、痛いほど理解していた。それだけでなく、僕はその父さんよりもすごくなければいけない。考えるだけで居ても立っても居られなかった。
「絶対に勝ちます」
そう告げて、僕は初めての最大級の大会へと向かった。
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