父の歩んだ栄光

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「いよいよだな」 「はい」  最大級の大会を一つ制し、次の大会へと歩みを進めていた。 「いうまでもなく、すべての大会の中でも最も映えある大会の一つだ。だから、この大会でお前の強さを証明できれば、父を超えることができる」  僕がこれから挑む大会は最も見る人、そしてこの世界に関わる人たちに影響力のある大会であった。この大会で圧巻の成績を収められれば、一気に僕の実力を証明することができる。そのためにはまず優勝。そして、それ以上の結果だけが僕に許された条件であった。 「怖いか……」  僕はそう声をかけられて、初めて自分の手が震えていることに気がついた。すぐにもう片方の手で震えを止めようと握りしめるが、震えが止まることはなかった。なぜなら、掴んだその手も震えていたのだから。 「大丈夫だ!」  僕の震える手を、その人はがっしりと両の手で掴んでくれた。 「俺はお前の強さを信じている。それは、お前の父さんのような強さではなく、お前自身の強さ。そして、その強さはお前の父さんを超える強さだと!」  強く握りししてくれる手と、まっすぐに僕のことを見てくれるその人の強さ。優しさがいつしか、僕の手から震えをなくしていた。 「ありがとうございます……」  僕は立ち上がって、歩き出した。 「ここに帰って来ます、かつての父を超えて」  僕は生涯でたった一度しか出場できない、映えある大会へと凱旋したのであった。  震えもなくなり万全の状態で勝負を待ち望んでいると、一人の選手が話しかけて来た。 「お前が、あの最強の子供か」  聞き飽きた声がこだまする。 「俺はな、お前のような親の──」 「やってみろ……」 「はっ?」 「やってみろ」  俺はいつものように群がってくる人を一瞥しながら、そう言い放ち。ただまっすぐ見つめた。 「ぶ、ぶっ飛ばしやる!!」  その言葉とともに、勝負の幕が下りた。
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