寂れた軸

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寂れた軸

朝8時に起きて、飯を炊いて、また会いアヤソフィアに向かった。今度の目的は缶詰のイクラを売って旅代を少しでも元取る事だった。英語をちょっとしゃべれる私が買ってくれそうな人を狙って当たっていました。しかし、一生懸命売り込んでも一個も売れない。2時間無理矢理もがいた挙句タクシーの運転手がほぼ原価で一個買ってくれた。残りの2個はアントンと焼け食いしてしまい、イスタンブルを出た。海岸沿いに南へ向かった。雨が降り出し、途中にあった喫茶店で一息休むことにした。 お茶一杯づつ頼んでバーに座った。アントンが隣にいたトルコ人と何語か分からないが、しゃべりかけ、これから自転車で便利に走れる道が途切れ、Izmit湾をフェーリーで渡った方が良いと薦められ、港まで車で届けてくれた。助かった!ありがとう、アントン君! Izmit湾の向こう側にあるYalova市からBursa市に導く山道に乗った。風が強く、上り坂でペダルを思い切って回すとびしょ濡れに汗かき、Tシャツまで脱いだり、逆に、下がり坂はで寒くなったらジャケットと帽子までまた着るもの。あんな感じで70キロ走ったら何処かの凹で後輪の軸が壊れた。おまけに雨も降りだした。バス停の屋根の下へ入って、考え始めた。腹も減って、缶詰をちょっと摘まんだ。でも、いいアイデアが来ない。修理所、部品店に見える建物が見渡す限り当たらない。数時間座ってたらアントンが「何かしろ」と言い出した。私も「何かしろ」と繰り返し、立ち上がって歩き出した。何処に行くのか分からなかった。犬も歩けば棒に当たるという発想だけだった。アントンが自転車とリュックの留守番でバス停で待っていた。 町の小道に入って、ゴミ捨て場を探した。そこで古い自転車があれば必要な軸が手に入る狙い。予感通り、ガラクタの置き場みたいな所に至って、寂れた自転車2台から軸を外した。大喜びだった!あの寂れた自転車の軸が意外と丈夫で、我々の旅行の末まで立派に耐えられた。
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