百物語

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百物語

凸凹の道で両足のアキレス腱が痛くなってきた。おまけに広いアスファルト道路が狭い砂利道に代わり、トマト、ザクロ、梨の菜園が絶えず続いていた。6時半に暗くなるのでそろそろテントを張る場所を探さなっきゃ。しかし、一日中降った雨で泥沼になった菜園でテントを張りそうな所が見当たらない。 途中にあった村に入って、メーロンとスイカを売っていた若者に近辺にホテルがないかと尋ねた。ホテルは我々が既に通った道に15キロほど前にあったようで、この村ではテントを張れるところがないと言われたが、喫茶店でトルコ茶をご馳走してくれた。厚く歓迎してくれるのはありがたかったが、雨も強くなり、どんどん暗くなっていたので感謝してテント張れる場所を探し出した。 あの時の絶望感は一生忘れられない。天を仰いで強く祈った。 びしょ濡れた我々は泥沼の中を歩き続けていた。 村を出た所に捨てられた家畜小屋があった。中へ入ってみると家畜向けのわらを保管する倉庫みたいなもので屋根の下にテントを張れるちょっとしたスペースがあった。救われた!と思い、心から感謝の気持ちで一杯になった。 テントを張ったらすっかり暗くなっていた。小屋の奥の方から妙な光が見えた。ポルタガイストでもいるのかと思い、怖くなった。落ち着くにはアントンと交代でホラーストーリを交わし始めた。ストーブで飯を炊いて満腹まで食べて寝た。若者からお土産にもらったメーロンとスイカを朝飯に残した。
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