0人が本棚に入れています
本棚に追加
「そんな急いでどこに行くの?」
部室棟を出たその時。入り口の側で一人の女性の声がした。
それは、二年前の春。聞こえた声と同じであった。
「き、綺麗になりましたね。皆沢先輩……」
振り返った先には、かつてのあの日よりも間違いなく綺麗な皆沢先輩がそこにいた。
「その……。いつもは下ろしている髪を編み込んでいるところとか、あと……。肌とかも綺麗なっていると思います」
「それはどうもありがとう。それで、急いでいたようだったけれど、大丈夫?」
「えぇ……。その用ってのは皆沢先輩のことだったので……」
「あら、奇遇……」
入り口付近にいた皆沢先輩が俺の元まで歩み寄り、そして、俺を追い越した。
俺の右の手を掴みながら。
「私も貴方に用事があったのよ」
皆沢先輩はそういいながら、あの日のように俺の手を掴みながら、どこかへと連れて行くのであった。
最初のコメントを投稿しよう!