ワンシーン

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「そんな急いでどこに行くの?」  部室棟を出たその時。入り口の側で一人の女性の声がした。  それは、二年前の春。聞こえた声と同じであった。 「き、綺麗になりましたね。皆沢先輩……」  振り返った先には、かつてのあの日よりも間違いなく綺麗な皆沢先輩がそこにいた。 「その……。いつもは下ろしている髪を編み込んでいるところとか、あと……。肌とかも綺麗なっていると思います」 「それはどうもありがとう。それで、急いでいたようだったけれど、大丈夫?」 「えぇ……。その用ってのは皆沢先輩のことだったので……」 「あら、奇遇……」  入り口付近にいた皆沢先輩が俺の元まで歩み寄り、そして、俺を追い越した。  俺の右の手を掴みながら。 「私も貴方に用事があったのよ」  皆沢先輩はそういいながら、あの日のように俺の手を掴みながら、どこかへと連れて行くのであった。
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