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ワンシーン
卒業式を終えて、俺たちは荷物を片手に廊下を歩いていた。
学年が変わり、気づけば一年の月日が流れ、こうして卒業式を迎え、その卒業式もまたこうして終わりを告げていた。
そんな中、俺と隣を歩く後輩である立川の学校生活はまだ終わりを迎えていなかった。そして、これから卒業生たちを撮影した画像の整理という、とてつもなくめんどくさい仕事が待っていたのであった。
「本当によかったんですか? 小室先輩」
「あぁ。話したいことは部活で話したし、別れの言葉も言ったからな」
「そんなこと言っても、皆沢先輩と話せるのも、今日だけですよ? 三笠のやつだって仕事をほっぽり出して先輩たちの謝恩会にまで行ってるんですから」
「まぁ、三笠のやつは皆沢先輩のことが大好きだったからな」
「あいつ。俺と同じ一年のくせに礼儀ってものを知らないんですよ」
「まぁまぁ。今日はめでたい日なんだから、無礼講ってもんだよ」
隣を歩く俺と同じ男子生徒である立川が先ほどから話している三笠という生徒は立川と同じ一年生で、皆沢先輩を失った俺たちの部活にとって唯一の女子生徒であった。今日も、俺たち写真部の活動で卒業式の写真を撮っていたのだが、三笠は皆沢先輩が卒業するのがさぞ悲しかったのか、ほとんど写真を撮っておらず、撮った写真もほとんどがボケており、意味をなさなかった。だから、この状態でいられても全く意味がないので、三笠だけは思い残すことのないようにしてもらうため、卒業式が終わったと同時に自由の身にしていたのである。
「それより、立川は行かなくてもよかったのか?」
「えぇ。自分はしっかりと話したので」
「そうか……」
確かに立川は三笠や俺と違ってそこまで皆沢先輩が卒業することは焦ることではないのだろう。
なぜなら、立川と皆沢先輩は今年の春から付き合っていて、離れていても繋がっている何かがあるのだから。
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