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一つの答えを導き出して、力無い俺の答えに立川が力強く答えてくれる。
「そんなことありえません。皆沢先輩と付き合っているのは小室先輩だって俺も、三笠も入部当時から思っていましたから」
立川のそう言われた瞬間、全身の力が抜ける。今まで張っていた糸が切れたようだった。
「それで、小室先輩が皆沢先輩と付き合っていないってのは本当なんですか?」
「あぁ。俺はてっきりあの日、立川と皆沢先輩が付き合っているものとばかり思っていた」
「でも、俺なんかよりも前に小室先輩だって皆沢先輩に好きだって告げたって言ってたじゃないですか」
「俺はあの時、振られたんだよ」
「ふ、振られた……?」
「あぁ。小室くんをそういう意味では見られないって」
先ほど立川がすごいと言ってくれたように、自分自身すごいタイミングで告白したとは感じないこともないがそれで振られてしまっているのですごくもなんともなかったのだ。
「そうか。立川は皆沢先輩と付き合ってなかったんだな……」
そう呟いて、自分の情けなさに悔しさをにじませる。この一年ずっと立川のことをいい後輩と思いながら、自分の好きな人を奪った仇のように心の隅で感じていたのだ。
「いいんですか。このままで……」
下を向いていた俺に、立川が話しかけてくる。
「皆沢先輩、もう行ってしまいますよ」
立川の言う通りであった。あれ以降、皆沢先輩とは一定の距離を置いて接していたので、皆沢先輩がどんな進路なのかさえ、さっぱりわからなかった。だから、本当に今日が最後だった。
「ありがとう。立川。今日、お前と話せてよかったよ……」
俺は立川の返答を聞くことなく、部室を飛び出した。
部室棟の廊下を走りながら、これからのことを考える。まずは卒業生の謝恩会がどこで行われているかを聞き出すために職員室へ行くべきかなどと。
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