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直ちに人類の全権大使を木星に送る有人飛行計画「オデッセイ」が開始された。このプロジェクトを主導する立場に就いたのが、日本だった。小惑星サンプルリターンプロジェクト「はやぶさ」を三回にわたり全て成功させた日本の他に、月軌道を越える宇宙空間まで行って帰還する宇宙船を建造した実績を持つ国は、2035年現在も未だに存在しないのだ。
木星探査船は国際共同プロジェクトとして月の衛星軌道上で作られ、完成間近だった三人乗りの火星探査船を、急遽改造して一人乗りの宇宙船に仕立て上げたものだ。とは言え、火星と木星では距離が違いすぎる。公転半径で比べてみても、地球と火星の距離は最短で7千万キロメートルと言ったところだが、地球と木星はその8倍以上離れているのだ。
従って、必要な物資を節約する必要上、人工冬眠が必須となる。しかしこの技術は主に難病に罹った人々を延命する手段として、2028年には既に実用化されていた。この技術が飛躍的に発展したのは、2020年に筑波大学でマウスを冬眠させる化学物質が発見されたためであり、この分野でもやはり日本の技術水準が世界中で最も高いのだった。
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