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そっと入口を開けてみると
やはり。
優花はすでに出社していた。
他に社員はおらず、優花一人だけのようだ。
しばらく様子を伺ってみることにした。
優花はまず、ポットのお湯を沸かし、コーヒーや紅茶の買い置きをチェックしている。
そして、全員の机を、置いてあるものは触らない程度にキレイに拭きあげ、
前日、誰かがバラバラに突っ込んだ雑誌を、種類別、月順にキレイに配列している。
さらに、どこかで買って来たらしい花を取り出し、花瓶に入っていた花と差し替えた。
あ、そうか。
意識していなかったけど、そういえば窓際に、いつもキレイな花が飾られていたな。
あれは、佐々木さんが用意してくれていたのか。
「……おはよう」
そこで隼人は、扉を開け、優花に挨拶をした。
「!?お、はようございます……」
こんな時間に人が来るとは思っていなかったのか、驚いた様子で優花が言った。
「その花、いつも変えてくれてたの佐々木さんだったんだね」
「あ……はい。あの、花があれば部屋が明るくなるから、私みたいな地味な女がいても、プラマイゼロになるかなって……」
「え、そんな理由!?」
隼人は思わず噴き出した。
「てか佐々木さんのこと地味だなんて思ってないよ」
フォローのつもりでそう言った。
営業を長くやっていると、相手が欲しがっている言葉が分かってしまう。
特に女の子に関しては、今までの経験からも「こうしてほしいんだろうな」「こう言ってほしいんだろうな」が隼人には手に取るように分かっていた。
こういう自虐を言う女の子は、オレが否定するの待ちなんだろうから……
「あ、そういうのいいです。自分が地味なことは私が一番分かってるんで」
「え!?」
真顔でそう言う優花に、隼人は思わず拍子抜けしてしまった。
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