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8
俺はちょっとした誤解で警察に連行されたことがある。まったくの濡れ衣だったのと、警察にも知り合いがいたりするのとで、すぐに釈放されることになったのだが。
どうやらミズ・ミリアが教えたらしく、俺が捕まったと聞かされた親父が、えらい勢いで警察署に乗り込んできた。そして、息子はどこだ、俺の子を返せ、と大声をあげながら暴れまくったのである。器物損壊、職務妨害、警察官への暴行未遂。
俺がなだめて、なんとかその場は納めたわけだが、あれはなかなかセンセーショナルな出来事だった。
あれ以来、この事件を知っている人たちは、俺の背後にいる親父の存在にちょっとビビっている。ミズ・ミリアすら、俺につきまとい過ぎたら職場に乗り込んでくるのではないか、と少し慎重になったのがわかった。
正直、俺も、自分になにかあったら親父がヤバイ、と思っている。
だが仲間たちはといえば、けろっとしていて、俺が危険な状況に陥ったら親父さんに連絡すればいいんじゃないか、と冗談とも本気ともつかないことを言っている。人のことはいえないが、あいつら図太い。
今晩みたいな日は、あの日のことを思い出す。
あの時、俺を見つけた親父はまっすぐ俺の顔を見た。俺は、親父がいることにびっくりし、おまけにえらい形相で突進してくるので逃げようかと思った。でも親父は駆け寄ると、隣にいた知り合いの警官から奪うように俺の腕を引っ張り、ぎゅーっと抱き寄せたのだ。
俺は、いつもとまったく違う親父の様子に戸惑った。
必死だったし、感情的だった。
なにより、俺をまっすぐ見た。
抱きしめられながら俺は親父をなだめたのだが、その間ずっと、親父から感じ取れたのは、安堵、だった。
親父の腕の中で親父をなだめながら、俺はその温もりを堪能した。
温かくて。
懐かしくて。
安心で。
心地よかった。
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