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目を開けると、見慣れた天井が見えた。窓からの光が明るい。朝だ。
「…あれ?」
自分の家だ。俺は布団の上に寝かされていた。
寝息が聞こえるので横を向くと、親父の背中があった。少し離れた所で、こちらに背を向け寝ている。
俺は起き上がった。
(俺、あの階段のところで寝ちまったのか…)
腕を伸ばして伸びをする。そのまま頭を振って、長めの前髪を払った。
立ち上がり、寝かされていた布団をたたむ。
服は昨夜のままだったので、着替えた。
親父が起きる気配はない。
俺は頭をがしがしっと掻くと、薄手の毛布を寝ている親父にそっとかけた。
「さんきゅ」
ミイラ取りがミイラ、っていうんだっけ。親父を連れて帰るはずが、俺のほうが寝入って、親父に連れ帰られたってことだな。
(俺のこと避けてるみたいなのに、俺に甘いんだよな)
こんな親父だから置いていけない、とか思っちゃうわけだ。
「俺ってやさしー」
俺は朝ごはんの準備をした。いつもどおり、親父の分も用意する。
一人で朝食を食べ、食器を洗い、さっと身支度を整える。
俺は戸口に立つと、相変わらず寝たままの親父を振り返った。
「行っってきますっ」
元気に言うと、学校へ行くため家を出た。
道を駆けながら、ぼんやりとしている記憶を呼び覚ます。
昨夜のこと。
外階段で眠り込んだ俺を背負って歩いていく、親父の背中の温もり。
布団に寝かせた後、頭をなぜた親父の手の心地よさ。
俺のほほが緩んでいく。
こういう役得があるから、チビであることも、まあ悪くない。だって、背が高くてごっつかったら、背負ってもらえないだろう。
結局、俺は親父が好きなのだ。ダメ親父で、避けられてるみたいでも、ね。
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