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いつものように、ひとり、台所で夕飯の片づけをしていたら、戸口から顔見知りのおっさんが顔を出した。
「よお、坊主。お前の親父さん、△△の酒場で酔って眠りこけてるらしいぞ」
俺は水道の蛇口をひねって止めた。
「さんきゅー、おっさん」
「迎えに行くのか?」
戸口に立った俺に、おっさんは同情的な視線を向けた。俺は肩をすくめてみせた。
「お店に迷惑かけちゃうからね」
おっさんは、ごっつくて大きな手を、俺の頭に乗せた。ちょうどおっさんの腰当たりの位置に俺の頭がくる。そしておもむろに、髪をぐしゃぐしゃっとかきまぜた。その、やや乱暴な手つきは、親父と同じ、肉体労働を生業とする人たちの優しさだ。
「気ぃつけて行けよ」
「おう」
俺は乱された髪を適当に払い、おっさんにもう一度礼を言って表に出た。
おっさんはそのまま歩き去っていった。
俺は、おっさんとは逆の方に歩き出した。
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