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そして、ヘンゼルとグレーテルはお父さんとお母さんに聞かれました。どっちの家で暮らしたいかと。
「四人で一緒に暮らしちゃダメなの?」
ヘンゼルとグレーテルの頭の中には、ずっと幼いころ、家族みんなでピクニックに出かけたり、街に買い物に行った一番幸せな記憶が徐々にはっきりとよみがえりつつありました。
「それは、無理なんだ。父さんと母さんは一緒には暮らせないって、もう分かったんだ。ゴメンよ。」
ヘンゼルはぐっとこらえました。グレーテルは、シクシクと泣いていました。今までずっとヒソヒソ声で話していたのです。なぜ今さら、声を上げてお父さんもお母さんもどこにも行かないで、と言えたでしょう。そう言えたら、どんなに良かったでしょう。
「ねえ、じゃあ週に一回だけ、みんなでこのお菓子の家で過ごそうよ。もしかしたら、パパとママももう一度上手くやれるって分かるかもしれないよ。」
「ヘンゼル・・・そうだ、そうだな!!お前の言う通りだよ。ありがとう。ごめんな。何度謝っても償えないほどひどいことをした。」
お父さんのたくましい腕に抱きしめられたとき、兄妹は同じ苦しみと幸せを共有しました。そして、ヘンゼルは少しだけ理解しました。ひどいことをしたけど、僕たちのことを本当に愛していたんだと。そして、お父さんは、本当のお母さんも一緒にその腕に抱きしめました。
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