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雪と降る
「なんてこった……ツいてねぇ」
雲多けれど晴れ渡るウル山脈……名も知られぬ山中――
滑落した頭上の崖を見つめつつ仰向けに雪にめり込み倒れているのは、黒い革の防具に身を纏う男。
年の頃は三十くらい、日焼け肌の中背中肉……
――脚をやられたか……
そう思いつつも右足を動かした瞬間、激痛が走る。
――やばい、意識が飛ぶ!?
訓練で培った精神力で耐える男だが、続いて訪れた[危機]に戦慄を覚える。
「こんな……ところで[魔物]に出逢うとは、ますますツいてねぇ」
地響きとともに男の前に現われたそれは、巨大な人型の存在……
逆光で詳細は不明であるが、おそらくは五~六メートル、幼児をそのまま巨大化させたような体型の生物が地響きを立てて迫ってきているのだ。
「もう、ダメか……!?」
しかしそれでも、男はその場から逃げようと身体を起こすが、それがまずかった。
「しまっ……!?」
無理に身体を捻ったことによる激痛の中、ようやく出せた最後の言葉……
そして、巨大な[手]が自身に近付いてくる光景を目に焼き付けながら、男の意識は闇に沈んでいった……
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