大切な日

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今日は娘の父親の誕生日だ。幼稚園から帰ってから、ずっと誕生パーティーの準備をしている。私も、今日は腕を奮って、ちょっと豪華なディナーにすることにした。 娘は、折り紙を折ったり切ったり繋げたりして、きれいに飾り付けをして、似顔絵を描いてプレゼントするのであろう。 私に見せようとして部屋をかけてきた時、父親が手作りして大事に飾っていたプラモデルに当たり、壊してしまった。 大粒の涙をこぼして私に助けを求めている姿を見て、素直に心優しく育ってくれたことを嬉しく思った。 自分で一生懸命描いた父親の似顔絵が、涙を掬っていた。 「パパに一緒に謝ろうね」 娘は小さく頷いて涙を拭った。 「さっ、ケーキを作ろう。きっとパパ、喜ぶよ」 シルバーの皿の上にケーキのスポンジをのせ、生クリームをたっぷりつけていく。 娘の顔には、生クリームが、ついている。 「味見」と言って、二人で一口舐め合った。 「ただいま」 ケーキのろうそくに火をつけて、電気を消す。ハッピーバースデーを歌う娘に、パパは涙もろくなっている。 「パパ、お誕生日おめでとう!」 父親に手渡すプレゼントの似顔絵は、こぼれた涙で少しにじんでいた。 娘をぎゅっと抱きしめ、耳元で指を鳴らした。娘の顔が、泣き顔から笑顔へ変わった。 二人で指を鳴らしながら、ケーキを頬張った。
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