おとうさんと

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 おかあさんの名前を知っている。きっとおとうさんは知らないと思っているだろう。けれど私は知っている。おとうさんが呼んでるその名前が、おかあさんの名前であると、私は知っている。  おとうさんが語り掛けているそれを、私はきっと知っている。けれど今の私にはそれが何だかわからない。きっと今わからないことは、今わからなくていいことなんだろう。  おとうさん、よかったね。そう声をかけたくなるくらい、おとうさんは楽しそうに笑っている。けれどきっと今これを私に知られたくはないだろう。だから私は声をかけずに寝なおす。  そのうち私が全てをわかる日も来るだろう。そう思いながら静かに眠る。
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