真琴と鏡のつくも

3/4
前へ
/4ページ
次へ
 美肌改革運動初日。社会人の貴重な休日。  私はいの一番に手鏡から説教を受けた。 「おいこら自称乙女。これはなんだ」  傍らに置いた手鏡がちょっと怖い。怒ってる。  半ば物置と化していたドレッサーの前に久方ぶりに座り、私は首をすくめた。 「えっと、化粧水?」 「これは美容水だ! 俺はスキンケアに使っている道具一式持ってこいって言ったよな、なんでこれだけなんだ」 「えっと、使ってるのそれだけだから、です」 「真琴、お前なぁ。ああー……」  なんだか出来の悪い生徒を叱る先生の姿が脳裏にうかんだ。  彼が人だったら今絶対天を仰いでいる。 「あの、ごめんなさい?」 「疑問形で謝るな。……よし分かった、基礎からいこう。真琴」 「はい」 「まずは買い物に行こう。話はそれからだ」
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加