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 上目遣いで窺うと、口を、あ、の形に開けたまま、目をあげて、何かを思い出そうとしているような表情だった。 「そうか……、2年か……。あのさ」と、目を合わせてきた。「君は僕にとって大切な人だし、君とこうやって一緒に暮らせて、ほんとに良かったと思ってる。それに、結婚して5年で、付き合ってた期間を入れると7年? あ、もう8年か、それくらいずっと一緒にいて、まあ、夫婦としてはそれほど長いとはいえないかもしれないけど、それでも僕は君と仲良しだと思ってるよ。恋人同士だった頃より仲がいいくらいじゃないかって。君はそう思わない? ほら、出かける時は手をつなぐし、あ、そうだよ、マンションの『どぶさらえ』の日にも手つないで行ってほかの部屋の人たちにいっぱいいろいろ言われたよね。それに軽いキスだって1日に2回くらいはするし、手をつないで寝ることもあるじゃないか。僕はそれが自慢なんだよ。結婚して2、3年で、なんであんなやつと結婚しちゃったんだろうとか後悔してるとかそういうこと言う人、会社にもいるけど、僕にはそういうの理解できないよ。家に帰れば君がいるって、あ、いや、君のほうが忙しくって帰りが遅くなることもあるし出張もあるけど、ほら、アパレルって季節に左右されるもんね、それでも君と同じ家に住んでることが嬉しいし、家に帰る時間が待ち遠しいってこともあるし、お酒だって、ほら、僕は大勢で騒いで飲むのはあんまり好きじゃないから、君とふたりで飲むのがいちばんおいしいって思うし、話していても、君とがいちばん合うって、ほら、君も言ってたじゃないか、僕がいちばん話の合う人だって。だけど、だけどさ、長いあいだ一緒にいると、そういう、なんていうのか、緊張感っていうのか、そういうのが薄れてくるっていうか、どちらかというと男と女っていうより、まあ、その、家族? あ、そう、家族って感じになるから、そういうふうに2年とか、そんなふうに言われても……」 「家族……」 「う……うん。家族……」
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