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   これは、一体、どういうことなんだろうかな、と七月(なつき)は思っていた。  何故、私は今、此処に居るのだろうか?  マスクをし、生まれてこの方、給食当番以外で身につけたことのなかった三角巾を被らされ、箒とカラのダンボールを持たされている。  どうやって番号を知ったのか、突然、英嗣(えいじ)の母親、槻田數葉(きだ かずは)から携帯に電話がかかってきた。 『明日、蔵の掃除をするのよ。  貴女、ちょっと手伝いにいらっしゃらない?』  ……何故ですか、と訊く間もなく、何時頃から始めるから、なにも持たずに来いなどと、矢継ぎ早に指示される。 「あの……っ」 『私、時間通りに来ない人間は信用しないのよ。  わかったわね、七月さん』  はい、と頷くしかなかった。
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