87人が本棚に入れています
本棚に追加
序章 その1
使い込んだレコードバッグから、お気に入りの一枚を取り出す。LP、EP。7インチ、12インチ。名前くらいはみんな、聞いたことあるよね。
レコードをターンテーブル(レコードプレイヤー)に乗せ、使いたい曲の箇所に針を合わせて、ヘッドフォンで音量・音質をチェックする。
準備ができたら再生ボタンをポン!
たちまちフロアが大音量で埋め尽くされる。
すぐに2曲目の準備。
CDはCDプレイヤーに放り込めば、頭出しはアナログ(レコード)よりずっと簡単。その分「味わいに欠ける」なんて言う人もいるけど。
ターンテーブルやCDプレイヤーは、左右に1対ずつ。その間を繋いで、音のバランスを取ったり2つの曲を混ぜ合わせたりする機械がDJミキサー。
ミキサーにはいろいろな機能がついていて、特にDJミキサーの特徴ともいえるのが「クロスフェイダー」。左右の音量を切り替える、横にスライドするスイッチ。今は1曲目の音だけが流れるように端に寄せてある。
最初の曲をフロアに流しておいて、2曲目はヘッドフォンでモニターして音のチェック。
1曲目が終わった瞬間に2曲目をスタート、同時にクロスフェイダーを一気に2曲目側へ寄せてフルヴォリュームで発射する。今日も決まった!
3曲目はフェイドアウトからのフェイドイン(徐々に入れ替える)。クロスフェイダーは真ん中へ。両方のヴォリュームを、ゆっくり入れ替える。自然な音の繋ぎに全神経を集中して。
2つの音を、切り替え、重ね合わせ、繋ぐ。それがアタシたちDJがやっていること。
でも、ただ曲を繋いでいるだけがDJじゃない。
フロアを盛り上げるのがDJの役目。そこには、プレイするDJの心がハッキリと映し出される。
マジメな人は選曲もマジメ。おちゃらけたプレイをするDJは性格もおちゃらけてることが多い。カッコつけ君はやっぱりカッコつけた曲ばっかりだし、神経質なDJが回す音は何となく神経質に聞こえる。
素敵なDJはミキサーの使い方が上手なだけじゃない。
人として素敵なら、DJとしても素敵。
2つの音を繋ぐのがDJなら、素敵なDJはハートのバランスも上手に繋ぐことができる。
少なくとも、アタシはそう思っている。
最初のコメントを投稿しよう!