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序章 その2
下北沢。
かつて東京サブカルチャーの本拠地だったこの街も、小田急の下北沢駅が地下に潜ってしまった頃から、他の繁華街とそう変わらなくなってきちゃった。
どこにでもある同じブランド、同じショップに同じファストフード。歩いてるやつらの顔つきまで同じ。
それでも、ちょっと裏通りに入れば、まだまだ下北も捨てたもんじゃない。アンダーグラウンドな香りのするオリジナル・ブランドやセレクト・ショップ、古着屋、素敵なカフェにバー、ライヴハウス、劇場、そしてクラブががんばっている。
「クラブ」っていっても、十人いれば十人が違うイメージを持ってると思う。
アタシたちがいうところの「クラブ」…たまり場はロック。
その「ロック」っていう言葉も、同じように人によって、だいぶ意味合いが違う。
ビートルズがロックだって人もいれば、永ちゃんがロックだって人もいる。「スピッツこそロック」って人もいるし、「ロックといえばワンオク!」って子もいる。
正直、その辺をアタシたちはあまり気にしてない。ジャンルを明確に区切っている店やイヴェントもあるけど、大抵は「ロック」という言葉をキーワードにして、パンクだったりロックンロール、ロカビリー、サイコビリー、オールディーズ、メタル、ハードコア、メロコア、UKロック、ラウドロック、ポップス、果ては歌謡曲まで何でも自由に回している。
DJにはDJの「ロックの空気」ってものが存在する。その空気が読み取れれば、あとは好きにやるだけ。それをアタシたちは「センス」と呼んでいる。
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