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記録6
「それで、何かわかったのか?」
烏の問いに悟が調べた内容を説明すれば、「へぇ〜、ってことはオレ以外とも喋れるってことか」と烏が興味深そうに言った。
「そう、かもしれない?」
悟は一瞬首を縦に振って同意しかけたが留まり、首を傾げた。
「何で疑問形なんだよ……」
烏の瞼が半分閉じて目が細まる。
「だって、俺、きみ以外とはまだ喋ったことないし……」
「それもそうか」
悟の言ったことに納得したようで、烏は「確かに」といった様子で短い首を使って頷く。
烏が何故、悟の病室にいるのかというと、悟と烏は自分と会話できる互いの存在を不思議に思い、興味を持ったからである。
当然、烏は悟の病室がどこなのか知っているわけではないので、悟が羽織っていたカーデガンを烏に被せて、人目につかないよう慎重に病棟内を移動し病室まで連れてきたのである。幸いにも悟の病室は個室であったため、都合が良かった。
ノックする音が三度、病室に響いて「失礼します」とドアが開く。
開きかけたドアを見て、悟はぎょっとし、すぐに烏のいる方へ悟が目配せして烏に一旦出るよう口を開きかけたが、「じゃ、あとでまた来る!」と状況を察した烏が言い、悟は無言で頷いた。
窓際に立ったままの烏は、外の方へと向きを変えて翼を広げ羽ばたかせると、近くの木へと移った。
「一宮さん、体調いかがですか?」
入ってきたのは担当看護師だった。
「はい、大丈夫です」
「さっき誰かと話してました?」
「いえ、すみません。携帯で動画観てて、多分それだと思います……」
一瞬、どきりと心臓が大きな音を立てたが、平静を装った。
「そうですか。もしお電話でしたら、デイルームでお願いしますね」
「はい、わかりました……」
看護師の背がドアが閉まって消えた瞬間、悟は肩の力を抜いて、胸を撫で下ろしたのであった。
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