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私は何をやっているんだろう。
視界に写る床がぼんやりとにじむ。
「つまりピンクはもっと歌もギターもうまいのか。すごいじゃないか!」
人がこんなに落ち込んでいるというのに、このおっさんはのんきにそんなことを言った。
「あれしか聞いてなくて、よく言うわよ。」
あ、今の声は震えていたかもしれない。
気づいてしまえば、涙が止まらなかった。
何も知らないくせに。
わからないくせに。
そんな時、私の頭の上にポンと何かが置かれた。
「……それじゃ、ピンクが納得できる歌をまた聞かせてくれ。」
頭に置かれたのはおっさんの温かくて大きなまるでお父さんのような手。
その懐かしい感じに、手を払いのけるのも忘れて私は泣いた。
答える代わりに頷きながら。
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