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知らないところでのお仕事。
それはとても怖い。
家族や仕事仲間以外と話すのも久しぶりだし
そんな私をレッドは励ましてくれた。
「ピンクはリーダーたちよりしっかりしているから大丈夫よ。」
冗談を含んだその言い方が逆にすごく励みになった。
他のお祭りのスタッフのみんなともうまくやれたのは仕事仲間のおかげ。
姫凛の名前のない『ピンク』の私は、嫌味を言われることもなく仲間に入れてもらえた。
そしてお祭り当日。
荷物を置きに控室に入ると、リーダーのおっさんたちが慌てて走ってきた。
どうやら、今日ステージで歌う予定だった演歌歌手が会場に来るのが遅れそうとのことらしい。
「間の時間をなんとか埋めてほしいってことなんだけど……」
息を切らしながらグリーンはそう言って、チラリとリーダーの方を伺った。
リーダーは腕を組んで、じっと私の方を見ている。
「ピンク歌ってみないか?」
……はい?
聞き間違いでなければ、このおっさん。
前座で素人の私に歌えと?
私が自分を指さし首をかしげると、おっさんはにっこりと白い歯を出して笑った。
「ちょっと!おっさん何言っているの!?」
「私に上手くなったら聞かせてくれるって約束だっただろう。」
いや、そうは言ったけど!
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