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ライブハウスとかではないとはいっても、お祭り会場の野外ステージ。
しかも本来くるはずの歌手の人目的のおじさんおばさんがいるぐらい。
こんなところで素人で全然世代も違う私なんかが歌ってどう思われるやら……。
だけど、おっさんはなぜか自信満々だ。
「それはっ!確かにしたけど……こんな人前で歌うって意味じゃない!」
「ずっと練習していると、聞いているぞ。それに今日もギター持っているじゃないか。」
た、確かに……この手に持っているのは大事な相棒。
少しでも時間があれば練習をしたいと思ってはいたけど。
そんなことをぐるぐる考えているとおっさんが私の手を掴みステージの方へ走り出した。
「ちょっと!おっさん!!」
「ピンク、おまえはアイドルを目指しているんだろ?私がヒーローを目指したように。」
私の声なんか無視するように、前だけを見ておっさんは言った。
そうだ……この人、リーダーはお兄ちゃんと一緒にヒーローを作り上げようとした人。
バカみたいな夢を今も大人げなく本気で追いかけている。
「顔も声も名前も知らないヤツの言葉なんか気にするな。自信をもって目の前にいる人に届けろ!」
悪意にあふれた掲示板の文字たち
それは確かに誰ともわからない人たちの言葉。
―――そうだ。
名前がない人たちの言葉にずっと怯えていた。
いや、本当は今も怖い。
でも私が届けたいのは……
「わかった。私、歌う」
私の言葉にリーダーはにんまりと笑った。
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