21人が本棚に入れています
本棚に追加
そうなると、この話を持ち込んだお兄ちゃんがすべての元凶に違いない。
隣に座るお兄ちゃんの方をジトリと見た。
「あれ?桃には話してなかったかな?お兄ちゃんがヒーローを派遣する仕事をしているって話。」
そんな私たちの様子にお兄ちゃんは困った顔をしている。
……て、ヒーローを派遣?
そういえば、『いつか僕はヒーローを作りたいんだ』なんて言っていたけど……。
冗談だろうと思っていた。
「そんなの本気にする人がいると思う?」
「いるから、ここにリーダーさんとブルーくんがいるんだよ。彼らは僕と一緒にヒーローを作り上げるために集まってくれたんだ。」
お兄ちゃんの言葉に一番見た目だけは立派なヒーローのおっさんは腕を組み、深く頷いていた。
その横にいる青いボールは自分の分のお菓子が終わったらしく、おっさん用のお菓子に手を出している。
なんだろう。
おっさんはともかく、青いボールの方はあまり賛同しているって感じはしないんだけど……お兄ちゃん。
こんな状況に呆れてお兄ちゃんの方を見た。
「まだこれからの事業だけどね。とにかく人数が欲しいんだ。」
でもお兄ちゃんの目は真剣そのもの。
冗談でもなく、本気でやろうとしているのは本当なんだ。
そういえば……
ふと私が「アイドルになりたい」と言い出した時のことを思い出した。
確かあの時、真っ先に協力して、どうすれば歌が上手くなるのかとか、レッスン先を調べてくれたのはお兄ちゃんだった。
お父さんとお母さんを説得してくれたのも。
―――それがすごく嬉しくて。
もし私がお兄ちゃんにできることといったら、きっとこれくらいだろう。
「家から出なくていいなら……」
そう言うとお兄ちゃんとおっさんは嬉しそうにハイタッチをしていた。
最初のコメントを投稿しよう!