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慌てて後ろを振り向くと、そこには帰ったはずのおっさんが拍手をしていた。
……て、うそ。鍵かけ忘れてたの!?
しかも、よりによって今のひどい歌を聞かれた!?
「ちょっと!勝手に部屋に入らないでよ!!」
私は近くにあったクッションやぬいぐるみを掴み、おっさんに向かって投げつけた。
「待て待て!企画書のページが足りなくて来ただけだ!」
そう言ったおっさんの顔にぬいぐるみが命中。
さすがにちょっと申し訳ない気分になる。
だけどそう思ったのはおっさんの方も同じようで、クッションやぬいぐるみたちの下から起き上がるとちらりとこちらの顔色を窺っている。
「確かに勝手に入ったのは良くないな。申し訳ない。一応……ノックはしたんだぞ。」
よく見るといつものヒーロースーツではなく、猫のキャラクターがプリントされたTシャツを着たラフな姿。
仕事時間外にわざわざきてくれたようだ。
勝手に部屋に入ってきたことはやっぱりムカつくけど……仕事の話なら仕方ない。
おっさんのもっている書類を奪い、中身を確認してみると……
確かにページが抜けている。
そういえば印刷するときに途中でプリンターの紙が詰まったような?
「お兄ちゃんのパソコンにデータあると思う。ちょっと待って……てください。」
ヒーロースーツを着て仕事をする変な人だけど、年上だし上司……なんだよね。
この人も文句言わないからつい忘れちゃうけど、敬語つかわなきゃ。
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