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「静粛に‼︎静粛に‼︎」
国権の最高機関たる国会議事堂は喧騒の最中にあった。
声を張り上げて沈静化を図る議長の声は議員たちの耳には全く届かない様子だった。
議長席の周りは法律の制定を阻むべく、野党議員が徒党を為して押し寄せている。
その様子はまるでゾンビが生き残った人間に襲い掛かるが如く状況だった。
大泉は同志の議長の額に汗が流れるのを申し訳なく思いながら、自らの席でその様子を眺めていた。
『すまんがこれが未来に繋がるのだ。ここは堪えどころだぞ、毛利議長』
議長席で孤軍奮闘する毛利議長に対して、大泉はこう思いながら事の成り行きを見守っていた。
「これより、GW法に対して起立方式で多数決を実施する。
賛成の者はご起立願います」
一層、野党議員からの野次は激しさを増す。
その中での強行的な採決だった。
大泉は静かに起立した。
それに呼応して、大臣たち、そして与党の議員が席を立ち上がった。
「賛成多数‼︎よって本事案は可決致しました。
これを持ちまして本国会は閉会します‼︎」
声を張り上げた毛利議長は議長席にへたりこんだ。
その耳には野党議員の野次はもう届いていないようだった。
やり遂げたという満足げな表情だった。
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