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大泉は総理執務室につくなり、自らの椅子に腰掛けた。
皮張りの椅子は、ほどよく体重を支え沈み込む。
「これで争いのない世の中が見えてくるんだ。
もう一踏ん張り、それで私の役目もそれまでだ」
大泉は静かに呟いた。
自らの引き際を感じつつ、最後の舞台を待つようだった。
しかし、引退間近の人間とは思えない程、彼の目には闘志に似た決意の炎が宿っていた。
大泉はデスクの上の受話器を持ち上げると、秘書室を呼び出した。
「あぁ、私だ。最後の仕上げだ。
世論は私のことを老いぼれやボンクラと呼ぶが、これだけは国民に理解して貰わねばならん。
政治家として最後の大仕事を成し遂げないとならんのだ。
君には迷惑をかける。
準備をよろしく頼む」
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