プロローグ

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「国民の皆様。 内閣総理大臣の大泉であります。 皆様がご承知おきの通り、本日国会にてGW法は可決致しました。 これにより、日本国は大きく変革していくこととなります」 大泉は圧倒的な力の籠もった声で国民に向かって訴えかけていた。 そのに表情には確信が。語り口には自信が溢れている。 大泉自身、「大した役者だな」と思うほどに今までの政治家人生の中で、一番のパフォーマンスに違いなかった。 秘書の用意した舞台は政府が本気になれば何だってできるんではないかと錯覚を生むほど完璧なお膳立てだった。 国営放送を始め、民放各局、首都東京の大型ビジョンだけでなく、大都市圏に設置されたビジョン。 それに若者にも広く認知させるためにネット系の通信事業者に至るまで、ありとあらゆる電波を抑えての放送だった。 「日本は第二次世界大戦以後、軍隊を持たず平和の象徴とあらんとしてきました。 しかし、世界は三回目の世界大戦に踏み切りました。 その結果どうなったかは知らないはずはありません。 生活の困窮度は増し、急激なデフレによって通貨価値は大暴落。 中立を保っていた我が国においてもグローバル企業の業績悪化から、失業者を多く出す結果となってしまった。 深刻なのは、生活が困窮することで犯罪の発生率も急激にあがってしまっている。 その原因は何だ‼︎ 〈金〉だ。この存在のせいで人は欲にまみれるのだ。 ならば、どうすればいい? 制度を変えるしかないだろう。 元来、人間は助け合える生物だ。 〈金〉などなくても善意さえあれば生活は可能なのだ」
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