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良くも悪くも話題性のある展示会なだけに、メディア関係者もちらほら見えた。
一年前、蛍夏は一躍時の人となったものの、今は服装も髪型も違う。なんなら、日傘にサングラス、マスクに日よけマフラーといった完全防備だ。
それでも、分かる人には分かるのだろう。記者らしき人がこちらに向かって近づいてきた。
「水嶋……水嶋 蛍夏さんですよね?」
遠慮がちに声をかけられる。声を潜め、横目で周囲を気にする様子から、あきらかにこちらに気を使っているのが分かった。
他社だけでなく、既に多く集まっている来場者にも気づかれないよう話しかけてくる記者の心遣いに、少しだけ警戒心を解く。
いいや――それ以上に、彼が単なる好奇心やネタの為だけでなく、純粋にOのことが……Oの作品が好きなんだと気が付いたからこそ、蛍夏は素直に自分が水嶋であることを肯定した。
何故なら、記者の鞄からは、経年劣化どころか、何度も閉じたり開いたりしたあとが見えるパンフレットが飛び出していたのだから。
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