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美しい雪の日に君は生まれた。
起きろ起きろ起きろ起きろ
耳元で甲高い音が興奮した子犬みたいになり響く
本日3回目のアラームを止め。まだ開けたくない目蓋をこじ開けて画面を確認した。
体を起こしてさっき見た夢を整理した。
妙にリアルで怖かったけど何故だか少しだけホッとするような、この先の未来私は幸せに生きていけるようなそんな気分になった。
私はなんでトラックに轢かれる夢を見てそんなことを思ったのだろう?
流石に四度寝をするわけにはいかなかったので
大きく背伸びをして、これまた大きな口であくびをした。
もうほとんど授業も終わってしまって最近は遊んだりダラダラしたり
昨日も遊ぶ予定だったけど急なゲリラ豪雨で外に行けずに
同じパジャマのまま生活してる。
部屋を出てお母さんに手を合わせて
自宅兼カフェの階段を降りてお父さんのいつも座ってるカウンターに向かう。
紅茶の香りに焼きたてトーストの香ばしい匂いが鼻を通って私のお腹を鳴らす。
コーヒー党だったお父さんは、お母さんが死んじゃってから、昔は私とお母さんしか飲んでいなかった紅茶しか飲まなくなった。
お父さんは「お前のを作るついでに飲んでいるだけ」って言ってたけど
この匂いに、味に、お母さんをいつも探しているんだ。
チリンチリン。
お店の扉が開いて
常連のお爺ちゃんがいつもよりちょっと元気なさそうに入ってきた。
「最近は本当嫌なことばっかだねぇ」
そうなのかいと父が軽く受け流しながら
お爺ちゃんが、注文する前にいつもと同じモーニングセットの準備をし始めた。
「そうなんだよ。美雪ちゃんと同じ歳くらいの男性が近所の公園で首吊りだってよ。それがまたよーこえー話でよ。その遺体笑ってたらしんだよー。」
私を怖がらせたかったのか途中から変な言い方に変わってたけど。
20代になった私はそんなことでは
怖くないのだ。
「へぇー全然怖くないけど何処の何公園だったの」
まぁ一応なんか!その男性の!幽霊?とか、まぁ信じてないけど、現れたりとか、するかも、知らないから
場所ぐらい知っとかないとね
ガタガタガタ
「美雪ちゃんは相変わらず怖い話が苦手だなぁ、
手が震えて紅茶が溢れそうじゃよ。
まぁ最後のは冗談じゃがな。」
もーなんて言いながら紅茶を飲み干して
半分になったトーストを咥えて
お皿をシンクに入れて上に戻ろうとした。
「美雪ちゃん!!美雪ちゃんは自殺なんてしたらダメだよ。どんな辛いことがあっても、生きることだけを諦めたらダメだよ。」
「分かってるよ!
この世界には紅茶とこの美味しいトーストがあるんだから、私は死なないよ。」
それになんだか
私の命は誰かの犠牲の上に立っている気がするんだ。
それはお母さんでもお父さんでもなくて
知らないようで知ってる
誰かの命の上にね。
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