<23・姫君の殺意>

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 *** 「めろん!めろん!」  めろんは自分を呼ぶ声にふっと意識を浮上させた。  体のあちこちが痛いし、なんだか頭もガンガンする。というか、明らかに背中がごりごりするのは気のせいだろうか。一体何処で眠っているのだろう。寝返りを打とうとして、砂利が手足の傷に当たり呻くことになる。どうやら屋外で寝ているらしい。屋外――屋外? 「わ、わああああ!?あ、あたしついに屋外でも平気で寝ちゃう女になっ……あれ?」  思わず叫んで飛び起きると。目の前で、ぽかんと口を開けてこちらを見ている雪李と眼があった。 ――あれ、これ、一体どういう状況?っていうか今日の雪李の服超かわいくない?普通に女の子に見え……あ、あれ?  記憶が繋がらない。そういえばその服には見覚えがあるし、今日はとても良いことのある日であったような。めろんはまだぼんやりする頭をトントンと叩く。そして、ふっと上げた自分の両腕が、細かい傷で血まみれになっていることに気づいて再度悲鳴を上げた。 「い、いたたたた!?あ、あたしこれ、これなんでこんなことになってるのかなー!?」 「え、覚えてないのかよ、めろん?」 「うん雪李のその反応でなんかめっちゃ大変なことがあったらしいのは理解した!ちょっと待って全力で思い出すからああ!」  めろんはややパニックになりながらも、座り込んだ姿勢のままあちこちを見回した。見覚えのある公園、白いテーブルと白い椅子が並んだ休憩スペース。その合間を縫うように、何人もの人達が倒れているのが見える。  そうだ、とようやくぼんやりとめろんも思い出してきた。確か、自分は雪李とお祭りに来たはずである。無色神社の例大祭。六月恒例のこのお祭りに、まさかの二人きりで来るというとんでもイベントが発生したのではなかったか。しかも、まさかの雪李から誘ってくれるという嬉しいきっかけで。そうだ、そこで、よりにもよってザインの民が襲ってきて。  それがマリアンヌとかいう、滅茶苦茶強い幹部の女で。自分は雪李と一緒に、何人もの無関係の人達と一緒に異空間に飛ばされてしまって。 「うわああん、良かったよ、良かったよなっちゃん!」  ふと、すぐ近くから泣き声がした。見れば中学生くらいの女の子の一人が、わんわん泣きながら別の子に縋りついている。
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