<23・姫君の殺意>

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「あの、なんか赤い宝石みたいなのにされちゃって!良かったよ、助かって良かったよおお!」 「え、え、そうだったの?ごめん、よく覚えてない……」 「馬鹿ああ!本気の本気で怖かったんだからあああ!」  そうだ、何人もの人達があの女に紅玉化させられてしまったのだった。この様子だと、マリアンヌが倒れると同時に、紅玉にされてしまった人達もみんな元に戻ることができたということなのだろう。 ――そうだ、あたし……なんとか、あいつを倒すことが、できたんだ。  この傷はその時の攻撃で受けたものだったのだ、とようやく思い出す。あっちこっちから血は出ているが、幸いどの傷もさほど深いものではないようだ。一部はもう血も止まりかけている――恐らく、エリオスの民の力というやつなのだろう。詳しくはよくわからないが。 「わっふ!」 「あ、ちょ……コロン!あんたどこにいたの!?」  どうやら、コロン=ギルティアはあの異空間に飛ばされずに現実に取り残されてしまっていたらしい。めろんの足元にじゃれつくコロン。雪李の手前喋るわけにはいかない分、一生懸命じゃれついてアピールしてくれているようだ。彼を抱き上げようとした、まさのその時である。 「!?」  コロンが慌てた様子で、めろんから離れた――雪李が勢い良く、めろんに抱きついてきたせいで。 「ゆ、ゆゆゆゆ雪李!?」  どういう風の吹き回しだろう。雪李も無事で良かった、というありきたりの言葉が消し飛んでいく。茶化そうと思って、すぐに思いとどまった。めろんを抱きしめる雪李の腕が震えていることに、気づいてしまったからに他ならない。 「……無事で、良かった」  それは初めて聞くような、雪李の泣き出しそうな声だった。 「本当に、無事で良かった……めろん」  一体それは、どういう意味なのだろう。どこまで深読みしていいのだろうか。  とりあえず、今は。 「……うん。雪李も、無事で……良かったよ」  他の人々もパニックになっているようだし、自分達のことを見ている者もそうそういるものではないだろう。精々すぐ傍にいるギルティアくらいなものだ。  めろんも彼の背に手を回し、抱きしめ返した。  こうして温もりを感じることができるのも、今自分達が息をしているからこそなのだ――そんな幸せを噛み締めながら。
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