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読書について
あおじは読書が好きである。
が、「趣味は何ですか?」の質問に「読書です!」と答えられる自信は全くない。
あおじが今までに最高に本を読んでいた時期は高校の3年間だ。
じぶんが読んだ本のタイトルを記入していく読書カードなるものがあったが、直ぐに書ききれなくなった。裏にも書ききれなくなったので、担任に「もうお前は書かなくていい。すげぇ読んでるのは分かった」と言われた程だ。
読むスピードはわりと速い方で、その上読み始めると全く周りの音は聞こえなくなるので黙々と読み進める。
続きが気になるとトイレにまで本を持っていくし、授業中もこっそりと読んでいた悪いヤツ。
あおじのマッマは活字中毒じゃね? という位読書家で、新たな本を大量に買っては、読み終えたら売る。そしてまた買うを永遠に繰り返しているタイプ。
なので家には常に本が沢山あったのであおじはそこから無作為に本を選んで読んでいた。マッマはどんなジャンルでも読む人なのであおじも自然と色々なジャンルの本を読んだ。
あと、兄貴がラノベとか買ってたからそれも読ませてもらってた。
というわけで、あおじは作品が古かろうが新しかろうが、フィクションだろうがノンフィクションだろうが、 物語だろうがエッセイだろうが、ラノベだろうがそうじゃなかろうが、ジャンル問わず、そこに文字があれば読み進める。内容が自分には合わないなぁ、とか、面白くないなぁと思っても気にしない。そもそも面白くないと思ったことはないかなぁ。
そんな自分を自分で“読書好き”だと思っていて、周りもそう感じていた。なので、趣味とかでもフツーに「読書です!」と答えていたのだが……そんな価値観を粉砕される出来事が起こる。まぁそんな仰々しい感じではないのだけど。
あおじが通学に使っていた路線は1時間に1本しか列車(電車ですらない)がないというド田舎鬼畜仕様。あおじはよく本屋で立ち読みして時間まで暇を潰していた。
その日はとある作家のとあるエッセイを読んでいたのだが、そこにこんなことが書かれていた。
その作家さんが通っている美容院。作家さんの担当美容師さんは若いおしゃれな女性であり、趣味は意外にも読書だという。
作家さんは自分が“作家”という仕事をしていることもあり、なんだか嬉しくなって色々と本の話題を振ったそう。
「読んでみて面白かった本は?」
「どの作家さんが好き?」
「○○って作家さんの作品どう思う?」
など定番な質問。だが、その美容師さんは質問に全く答えられないどころか、
「そういうのはよく分からないんです~」
と笑っていたとか。そのことに作家さんは衝撃を受けたそうで、本のタイトルも知らず、作家さんにも疎いというのに何をもって趣味を読書だなんて言えるのだろうか? 多分あの美容師は読書なんてしてない、という感じで最後は括られていた。
あおじはゾッとした。だってあおじも作品タイトル、作家さんの名前なんて沢山本を読んだが一つも頭に残っていなかったから。
「読書が趣味です!」なんて言ったら「誰の本?」「タイトルは?」という質問に発展していくのが自然であるが、あおじはこれに答えられない。
ぶっちゃけ作家さんの名前なんて気にしたこともなければ、作品タイトルはカバーで隠れていて見てもいない。
図書館などで自分で本を選んで読む時は、大抵漫画やアニメ、ゲームの原作やモチーフになったものを読むので尚更気にしていなかった。
確かに「読書が趣味です!」と言ってるヤツが作家さんやタイトルが答えられないと不自然だとやっと分かったあおじはそこから読書というワードは封印した。
しかし、他に趣味もないあおじは就活の時の履歴書には趣味・読書と書いており、もし面接官にどんな本を読んでいるのか? と尋ねられた場合にはこう答えるというパターンをいくつか作って暗記していた。もうそれさえも忘れたのだが。
多分あおじは読んでいるその時が楽しければそれでいい、“本というものを読む行為が好き”という人間なのであると思う。自分で言って何を言ってるかよく分からねーが。
あおじと同じタイプの人がどこかにいないだろうか? このモヤモヤというか、感覚を共有したいと思う今日この頃。
おわり!
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