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「…やば!」
久々にあの日の唇の感触と、慎司と呼ぶ兄の声を思い出し、手が股間に伸びそうになった俺は、慌てて手を引っ込める。せっかく桐島を呼んで性欲を解消したのに、また一人で抜いたら意味がないし体力を消耗するだけだ。
「ったく、あんにゃの思い出に浸りながらやりたかったのに、あいつは喋りすぎなんだよ」
お門違いの八つ当たりをして、俺は、新しいシーツに取り替えたばかりの、寝室のベッドに潜りこむ。
あれから15年、兄とは一度も会っていない。
なのになぜ、今だに強く焦がれてしまうのか?
案外会えば、すっかり老けたおっさんになったなと落胆し、ただ遠き日の思い出に変わるのだろうか?
「寝よ寝よ」
母の電話は、父の三回忌の話だったというのに、兄のことばかり考えてしまう自分を親不孝だと呆れながら、俺は目を閉じ眠りに落ちた。
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