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「おれの部屋、二階」 「あ、はい」 「お茶とか出さないよ」 「うん。大丈夫」  慣れた足つきで階段を上がっていく永田くん。階段を上がってすぐのとびらを、永田くんは開けた。 「どうぞ」 「……きれいにしてるね」  わたしは今日、とつぜん訪れたわけだから、前もって掃除をしておくなんてできない。それなのに永田くんの部屋は、今日越してきたばかりの部屋みたいに片づいていた。 「男の子の部屋って、もっと散らかってると思ってた」 「おれの部屋がきたないと、説得力ないから」 「え?」 「弟いるんだ。中学生の」 「えっ。そうなんだ」 「部屋片づけろっていうの、おれの役目だから」 「……へえ」  わたしとおなじだ。永田くんも、だれかの「見本」なんだ。  けれど、それを口にするのはなんとなくやめた。永田くんがいやがりそうだから。ごきげんをそこねて、やっぱりやーめたとかいわれたらさいあくだ。  すると、永田くんはおもむろに「で?」とたずねてきた。 「で、って?」 「どうやってすんの?」 「どうやってって……」 「小泉さんも脱ぐの?」 「えっ? な、なんでわたしが脱ぐのっ?」 「え? じゃあおれだけ脱ぐの?」  永田くんは怪訝そうに眉をしかめたけれど、わたしのほうがその顔をしたい。永田くんの自慰を見るためにやってきたのに、どうしてわたしが脱がなくてはいけないのか。 「永田くんの、自慰、が見たいのに、どうしてわたしが脱がなきゃいけないの?」  わたしは疑問をそのままぶつけてみた。  ちなみに「オナニー」や「精子」という表現は、あくまで永田くんになめられないようがんばって発言したものなので、今後に関してはオナニーを「自慰」、精子を「永田くんの産み出した液体」と称することにきめた。
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