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7
それからしばらくすると、わたしたちは約束をせずとも毎週火曜日にあのコンビニで待ち合わせるようになった。
最初のうちは「今日だからね」とか「忘れないでね」とか、放課後になると念には念をでLINEを送っていたけれど、ある日の火曜日に永田くんのほうから「みやまっちに呼ばれてるから今日ちょっとだけ遅くなる」と初めてLINEがきた。つづけて「あとこれから念押しの連絡いらない。ちゃんと行くから」とも。
お母さんには「毎週火曜日に友だちと図書室で勉強することになった」とうそをついた。
真実を微妙に織り交ぜることで、罪悪感がほんの少し緩和される。
そう。わたしたちは「勉強」してる。友だちでも図書室でもないけれど。
二ヵ月もたつと、永田くんとのこの時間があたりまえのように生活の一部になった。永田くんはわたしにお茶を出してくれるようになったし、液体が飛び散らないようティッシュを用意するようになった。パンツを脱ぐときもぜんぜん恥ずかしそうじゃなくなって、それはちょっと不満だったけれど、自慰をしているときの永田くんは相変わらずかわいかった。
いつからか永田くんは目をつむらなくなった。潤んだ瞳でまっすぐにわたしをみつめてくるようになった。
最初は視線にがんじがらめにされたようで落ち着かなかったけれど、永田くんがそろそろ限界というときに「小泉、もうだめ。いっていい?」と涙目で懇願するもんだから、わたしはすっかりいい気分になって「まだだめ」とじらしつづけた。だめといわれた永田くんは喘ぎながらダイヤモンドを口から垂らしていて、それでもけなげにわたしの指示に従っているさまがとてつもなくかわいかった。
会う回数が増えていくたび、永田くんがかわいくてかわいくてしかたがない。それは、動物をかわいいと思う気持ちとも、妹たちをかわいいと思う気持ちとも、ぜんぜんちがう。
この気持ちはいったい、なんなんだろうか。
「小泉」
永田くんの自慰が終わって、いつもどおりティッシュで萎んだガーネットを拭いているときだった。
永田くんが、ふいにわたしの名前を呼んだ。
「うん? なに?」
「……あのさ」
「うん」
「おれたちって――」
そこまでいいかけて、ぐっと言葉を飲みこむ。そして、やっぱなんでもない、と、静かに首を振った。
帰ろうとして玄関のとびらを開ける直前、永田くんがわたしを背中から抱きしめてきた。髪に顔を埋めてすんと匂いをかいでから「おねがいがあるんだけど」という。
「うん。なに?」
「……こういうの、おれ以外とはしないで」
おねがい、と、抱きしめる腕に力をこめる。
「うん。永田くん以外とはしてないし、するつもりもないよ」
笑ってほんとうのことを答えると、永田くんはほっとしたようにまつげを伏せて笑った。
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