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星降る夜に2
そこには大きくえぐれた大地があった。湖は干上がり、なぎ倒された木々が遠方で燃えている。その抉れた大地の中を、ひたすらに歩く少女がいた。纏う貫頭衣は土に汚れ、所々擦り切れている。
「どこ……みんな……どこ……」
コメットは、よろめきながら彗星に吹き飛ばされた集落の人々を探し求めていた。何日も何日も歩き続けたが集落はおろか、共に住んでいた人々を見つけることはできなかった。コメットも何日も何も口にしていない。
それでも力を振り絞ってコメットは歩き続ける。どうしても、やらなければならないことがあったからだ。コメットは、壁画のある洞窟へとやって来ていた。描かれた彗星を取り囲むように書かれた無数の文字を見て、彼女は顔を歪める。
ここに書かれた文字たちは、彗星を賛美しているのではない。彗星に呪いの言葉を送っているのだ。ここに集落を築いてきた人々は、何度も彗星から落ちる隕石によって亡くなり、その生き残りがここに文字を残してきた。
朦朧としている意識を何とか保ちながら、コメットは自分の指を齧る。指から滴る血で、コメットは壁画に文字を書いていた。
『ここにいては彗星に滅ぼされる。逃げろ』
今度ここにやって来る人々が、この文字を読めるかどうかは分からない。けれど、コメットはこれ以上、犠牲を増やしたくはなかった。どうか、この文字の意味に気がついてほしい。こんな悲劇を二度と繰り返さないで欲しい。
そう願いながら、コメットは地面に倒れる。
彼女の意識はそこで途切れた。
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