星降る夜に

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星降る夜に

 その洞窟壁画を見て、コメットは感嘆とため息をついていた。壁画には青い尾を持った巨大な彗星が描かれている。その彗星を賛美するかの如く、様々な文字が壁画の周囲には描かれていた。  この壁画は、コメットの集落を守ってくださるご神体を描いたものだ。ご神体は遠く星々が漂う空の上を漂っている。集落に伝わる神話によると、ご神体は星の湖を創り出しだし、コメットの先祖を助けてくれたのだという。彗星はその身の一部を砕き、大地にたたきつけることで湖を作り出したのだ。  コメットの集落は星の湖の畔にある。ご先祖様たちは水を求める旅の末に星の湖を見出し、ここに集落を築いた。  その頃、コメットの眺めている洞窟壁画はもう描かれていたという。彗星の絵に添えられた文字を誰も解読することが出来なかったが、それは賛美の言葉だろうとご先祖様たちは思った。  流浪の旅を続けていたご先祖様たちにとって、数十年に一度空に現れる彗星は、時の流れを告げる星として古くから信仰されていた。その信仰と同じく、壁画を残した人々は彗星を自分たちと同じように神として信仰していたのだろう。  今年は、その彗星がこの地へとやってくる日だ。洞窟を出れば、青緑に光る彗星が明るく夜空を照らしている。集落では湖を授けてくれた彗星を祝福するために、人々が篝火を焚き、その周囲で踊っていた。人々は様々な刺繍の施された貫頭衣を纏い、美しい青のビーズを火に煌めかせながら微笑んでいる。  そのときだ。彗星が二つに分かれたのは。踊っていた人々は空を見上げ、歓声をあげていた。その割れた彗星の片割れがぐんぐんとこちらに接近してくる。彗星の破片はさらに小さく砕け、赤く燃え上がりながら遠方の山へと墜落した。  瞬間、すさまじい突風が周囲に吹き荒れる。コメットは大きく眼を見開き、山が粉々に砕け、燃えている様を見た。集落から悲鳴が聞こえる。赤く燃える彗星の欠片が、こちらに向かってくるではないか。  逃げ惑う人々が瞬く間に彗星の放つ炎に呑まれていく。土埃があたりを覆い、強い衝撃波がコメットを襲った。  
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